審査のポイント(1)
「個人信用情報」
いくら条件の良い方が申込みをしても、この個人信用情報に問題のある記録が残っている場合は住宅ローンの審査は通りません。個人信用情報とは、借入の契約内容や返済状況を貸し手の金融機関が持っていたり、その金融機関が個人信用情報機関に登録した記録です。返済に遅れなどがあるとしっかり記録されています。この記録内容に対する判断が各金融機関により異なります。
審査のポイント(2)
「収入の安定性・継続性・勤続年数・勤務先」
住宅ローンの年収は、これまでの2~3年の実績で評価(転職した場合の以前の職場の収入は対象外)されます。収入見込みでは審査されませんが、収入が減る要因は審査され影響があります。その収入の実績が年によって大きく変動する場合には、変動の原因とその変動幅により審査に大きな影響があります。
また、雇用形態も正社員・正職員はどこでも申込みはできますが、契約社員や派遣社員やパート社員では、申込みできないローンもあります。
就職や転職してからの経過年数にも基準があり、就職してから3年、転職してから1年以上などの基準があります。転職1年未満でも申込みでき、審査も通る場合がある住宅ローンもあります。
審査のポイント(3)
「既存の借入」
住宅ローンの申込み時点で、返済中の分割払い、リボ払い、残高スライド払いなどの一括で返済しないものと、クレジットカードで買い物をし、一括で支払をしているもののうち、一括で支払わない借入が、住宅ローンには影響します。
まず、住宅ローンには、「返済負担率」という基準がありますが、住宅ローンの借入予定額に対する年間返済額と、一括で支払わない借入の年間返済額の合計が年収に対して何%を占めているかという数値です。30%以下や35%以下となっている住宅ローンが多いのですが、20%以下や40%以下とういうローンもあり、申込人の職業や年収によって金融機関ごとに様々です。
次に、借入が車や商品の購入の分割払いなのか、ショッピングのリボ払いなのか、カードローンのキャッシングなのかによって審査に影響します。キャッシングを利用しているだけで、審査が通らないところもあります。また、現在は大手金融機関の傘下に入っていますが、消費者金融での借入履歴(完済後5年もしくは契約終了後5年間)が信用情報機関に残っているだけでダメなところもあるため、利用されている方は、ローンの選択肢が減ることになります。
審査のポイント(4)
「100%融資を避ける」
土地建物に必要な資金を全額借入(フルローン)で審査を申込すると、不承認や減額承認(借入額を下げられる)となるケースが多くなります。年収に占めるローン返済額の割合(返済負担率)が低くても起こります。1割は自己資金を充てられるように、またネット銀行であれば2割は自己資金を充てられるように資金計画を立ててください。
審査のポイント(5)
「完済時年齢」
多くのローンの完済時の年齢は75歳までとなっています。定年後の返済期間が長いと返済が可能かどうかとういことになります。定年までに返済完了であれば、老後の家計収支もよくなり、また、審査上でも有利になります。
なお、住宅金融支援機構のフラット35では、完済年齢は80歳までです。
団体信用生命保険(団信)
住宅ローンの借入期間中に、死亡や高度障害になった場合に、その保険金がローンの残高支払いに充当されて住宅ローンは終了します。
ほとんどの住宅ローンでは、団体信用生命保険への加入は必須です。その保険料は、借入の金利の中に含まれています。普通の団信信用生命保険は、死亡と高度障害の場合が対象ですが、がんと診断された場合にもローンがなくなる「がん団信」、がん・脳卒中・心筋梗塞と診断された場合もローンがなくなる「三大疾病付団信」や、健康告知の審査を緩和した「ワイド団信」などの種類があり、それぞれ、金利が0.1%~0.3%高くなります。団体信用生命保険も生命保険ですので、申込書に記載の健康告知の質問事項に答えることになりますが、申告内容により団体信用生命保険に加入できない場合があります。こうなると、他の条件をすべて満たしていても、住宅ローンを利用できなくなります。
しかし、住宅金融支援機構の全期間固定金利の「フラット35」であれば、加入が必須ではありませんので、利用可能です。
保証会社
ローンの審査は、申し込んだ金融機関だけが、審査をしていると思われている方が多いと思いますが、保証会社を利用した住宅ローンの場合は、保証会社の審査が通らないとローンは利用できません。金融機関自身が、貸し倒れのリスクを負っている住宅ローンでは、審査は厳しく、保証会社を利用した住宅ローンのほうが、審査は少し緩いといわれています。保証会社がどこかで審査の厳しさは変わり、保証会社が自分のところの系列会社であれば、他の保証会社を利用するローンよりも審査は厳しくなります。ネット銀行などは、金利なども低金利を宣伝していますが、保証会社を利用していませんので、審査は厳しくなります。
借入可能額
土地や建物の売買金額や請負額の合計に加えて諸費用(登記費用など)も含めて借入(土地と建物の合計の1.1倍~1.2倍)も可能ですが、審査は厳しくなり、保証料も借入額の増加分以上に高くなります。なお、住宅金融支援機構の「フラット35」では、諸費用を含めて借入することはできません。
ただ、諸費用分の資金の用意ができない状況で、住宅ローンを組むことはよくありません。貯蓄ができない状況で、さらのローン返済や税金の支払いとなると、家計収支がひっ迫したものとなることが予想されるからです。
住宅ローンの3つのリスク
住宅ローンには、3つのリスクがあるといわれます。
1つ目のリスクは、「金利のリスク」です。金利が上がれば返済額が増えるリスクがあります。不動産広告などで、ローンの利用例が記載されていますが、ほとんどが、変動金利または2・3年の固定期間選択型で返済額を試算しています。これは、低い金利のため、当初の返済額を安くみせる効果があります。たしかに当初の返済額は安いのですが、金利が上昇した場合の返済額の増加にどう対応するかということは教えてはくれていません。
このリスクを回避する方法は、全期間固定金利の住宅ローンにするか、当初の返済額の差額を貯蓄をするか、当初から繰り上げ返済資金としてまとっまた資金を準備しておくかのいずれかの対策が必要です。
2つ目のリスクは、「生命のリスク」です。ローンの借入期間中に、死亡などするリスクですが、このリスクは団体信用生命保険や生命保険で備えられます。
3つ目のリスクが「火災のリスク」です。これも火災保険で備えられます。ただし、地震を原因とする火災や倒壊や津波被害には、地震保険をつけていないと補償されません。建物の立地により付加するかどうか考えてください。あとから火災保険に付け足す(同じ保険会社)ことができます。
つまり、3つのリスクのうち、保険で備えることができないのが「金利のリスク」です。
全期間固定金利にすると、金利上昇のリスクには備えられるが、金利が低下した場合の返済額減少という恩恵が得られないと記載している書籍がまだ見受けられますが、この超低金利時代に組む住宅ローンで、さらなる金利の低下によるメリットを得られないとすることは、現実的ではありません。
これから住宅ローンを組む方も、現在返済中の方も、「金利の上昇リスク」にどう備えるかを考えておく時期だといえます。