どの金利タイプの住宅ローンを選択すべきか?
「超」がつくほどの低金利時代にはどのような住宅ローンを選ぶべきかを、住宅ローンの種類を比較検討しながら考えます。
住宅ローンには大きく分けて2種類(一定の期間経過後に金利が変動するローンと「全期間固定金利」のローン)、さらに金利が変動するローンは、6か月ごとに金利が変わる「変動金利タイプ」と当初の2~20年の金利は固定しており、その期間経過後の金利が未確定の「固定期間選択型金利タイプ」に分かれ、合計3種類があります。
変動金利タイプ(6か月ごとに適用金利がかわる)のローンでは、注意すべき点がいくつかあります。
(1)店頭表示金利と当初固定期間の金利優遇幅
店頭表示金利も金利優遇幅もずっと変わらなければ、適用される金利は変わりません。
しかし、多くのローンは、店頭表示金利が変わらなくても、金利優遇幅が小さくなる(適用金利が上がる)ように作られています。
変動タイプ(6か月ごとに適用金利が変わる)に当てはめてみると、借入期間が35年の住宅ローンの場合は、69回も適用金利が変わることになります。
適用金利が変わると、毎月の返済額に占める元本返済分と利息返済分の内訳が変わります。
(2)1.25倍ルール
適用金利が上がっても、5年間は毎月の返済額が上がらないようにした制度です。
返済額が上がらなければ、得をしているようにみえますが、6か月ごとに適用金利が変わっているため、適用金利が上がると、元本の返済額は減り、利息の支払いが増えていることになります。
具体的な数字を変動金利タイプでみてみると
借入金額:3000万円 借入期間:35年 当初の金利:0.60%
【ケース1】
2年後に金利が1%上昇
1回目返済 :毎月返済額79208円=(元本64208円+利息15000円)
25回目返済:毎月返済額79208円=(元本41275円+利息37933円)
【ケース2】
2年後に金利が2%上昇
1回目返済 :毎月返済額79208円=(元本64208円+利息15000円)
25回目返済:毎月返済額79208円=(元本17567円+利息61641円)
【ケース3】
2年後に金利が3%上昇
1回目返済額:毎月返済額79208円=(元本64208円+利息15000円)
25回目返済:毎月返済額79208円=(元本 0円+利息79208円)
さらに未払いの利息6142円が発生
貸し手側にも住宅ローンのリスクは3つあるといわれます。
その1つは、「金利変動のリスク」です。低い固定金利で貸してしまってる時に市場金利が上がると、高い金利で貸して、より多い利益を得られたかもしれなかった機会が失われたり、預金している人への利息の支払いが増えて融資による利益が減ってしまうことですが、これをみると、金利が上がれば貸し手側は利息を多くもらえるので、貸し手側にはこのリスクはないことになります。貸し手側にリスクがないというこは、借り手側がそのリスクを負担する構造になっています。
固定期間選択型(10年固定)の試算もしてみると
10年固定金利 借入額3000万円 借入期間35年 当初金利0.9%
【ケース4】
10年後に金利が2%上昇
1回目返済額:毎月返済額 83294円=(元本60794円+利息22500円)
121回目返済額:毎月返済額104917円=(元本50858円+利息54059円)
【ケース5】
10年後に金利が3%上昇
1回目返済額:毎月返済額 83294円=(元本60794円+利息22500円)
121回目返済額:毎月返済額116841円=(元本44141円+利息72700円)
変動金利タイプの金利が上昇すれば、他の金利タイプに変えればよいように考えてしまいがちですが、他の金利タイプもすでに金利が上昇している可能性が高くなります。そのときに、当面は月々の返済額が増えてしまう金利タイプに変更できるでしょうか?
総返済額を減らせるかもしれませんが、当面の支払いが増えることを許容できるでしょうか?
今のような超低金利時代に住宅ローンを組むときは、金利が低下して得をするという想定は必要なく、金利が上昇した場合の想定のみで十分です。金利上昇のリスクを借り手側が負う以上、そのための対策がとれるようにしましょう。初めから返済負担率が高い方(年収に対して借入額が多い)は、このリスクの許容範囲が狭くなってしまいます。
借り手側のリスクは3つあります。
1つは、生命のリスクで、これは、生命保険や団体信用生命保険でカバーできます。
1つは、火災のリスクです。これも火災保険でカバーできます。
1つは、金利の上昇リスクです。これは保険ではカバーできません。
変動金利タイプのローンを選んでよいのは、金利上昇のリスクに備えられる人だけということになります。
ローンを検討する際には、当面の支払いは多くなりますが、まずは全期間固定の金利タイプで検討しましょう。あなたが、金利上昇のリスクに備えられるというこであれば、変動金利タイプも検討してみましょう。
最後に、住宅ローンは、金利だけでなく、融資手数料や団体信用生命保険の保険料などのローンにかかわる諸費用も考慮しないといけませんが、金利が1%上昇すると、諸費用の差額などはほとんどなくなります。さらに金利が上昇すると、諸費用も含めた総返済額も
全期間固定金利タイプのほうが少なくなります。
この先の金利がどうなるかは予測できませんが、備えは必要です。
住宅ローンは、金額も借入期間も、車などの他の借入とはまったく別物です。一時の頑張りだけでは、どうにもならない超ド級の借入なのです。
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